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前・初期股関節症の股関節痛抑制のための4因子

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こんにちは。起業理学療法士の西島紘平です。

今日は、理学療法科学の原著論文「前・初期股関節症患者に対し股関節痛抑制を目的とした理学療法を行う際に着目すべき因子」(R)についてまとめました。

対象を前・初期股関節症に絞った調査であり、研究結果はもとより、評価・理学療法介入について非常に参考になる論文です。

 

前・初期股関節症患者に対し股関節痛抑制を目的とした理学療法を行う際に着目すべき因子:要旨

目的:前・初期股関節症に対し理学療法を施行した際の疼痛抑制因子を明らかにし、治療戦略構築の一根拠を得ること

対象:初回来院時の股関節痛がNRS4以上の前・初期股関節症患者39名を対象

※NRS:Numeral Rating Scale

統計解析:理学療法介入後2ヵ月時股関節痛がNRS2以下になるための因子にについて多重ロジスティック回帰分析を用いて検討

結果:2ヵ月時股関節の疼痛抑制因子(下記4つ!!)

最小関節裂隙幅(オッズ比0.1・カットオフ値3.4 mm

初回外転可動域(オッズ比1.5・カットオフ値41.5°) ※小さい方が2ヵ月時抑制される

2ヵ月時主観的 stiffness(オッズ比3.0・カットオフ値1.5 点

ホームエクササイズ実施点数(オッズ比0.3・カットオフ値4.5 点

評価項目

※初回と2ヵ月時点で同一検者が評価

・年齢、BMI
・疼痛
NRS:Numeral Rating Scale
・日常生活における主観的stiffness
・柔軟性
股ROM(屈曲,伸展, 外転,内転,外旋,内旋)
SLR
HBD:(Heel buttock distance踵殿間距離)
FABERE(Flexion, Abduction, External rotation and Extension)
・股関節インピンジメントテスト
FADIRF(Flexion, Adduction, Internal Rotation and Flexion)test
・下肢筋力
片脚立ち上がりテス ト
・X線像(立位患側股関節)
CE 角,
Sharp角,
AHI
MJS(Minimal joint space最小関節裂隙幅)
・2 ヵ月時点におけるホームエクササイズ実施回数
・通院回数

評価方法・理学療法介入の詳細について下記に記載します。

評価:日常生活における主観的stiffness について

「朝起きた時のこわばりはありますか?」
「昼間動き出す時の こわばりはありますか?」

上記2設問に対する自己評価
「全然ない:0点」,「軽い:1点」,「中 くらい:2 点」,「強い:3 点」,「非常に強い:4 点」の 5段階で回答

その合計が主観的stiffnessの点数
※こわばりは股関節周囲に感じるもので、評価日とその前1週間の平均的なレベルとした

評価:FABEREについて

背臥位で患側足部を健側大腿遠位部に置き、患側股関節を自動で最大開排させた際の脛骨粗面からベッドまでの距離を計測。

評価:FADIRF- testについて

背臥位で患側股関節を膝屈曲位で他動的に操作し、最大屈曲させた状態から足部の位置を固定した状態で内転内旋させた際に股関節前面に疼痛が生じた場合を陽性

最大屈曲位で疼痛が生じる場合:3点

最大屈曲位から内転内旋させた際に膝が正中軸に来るまでの間に疼痛が生じる場合:2点

さらに膝が正中軸を超えた際に疼痛が生じる場合:1点

疼痛が生じない場合:0点

評価:片脚立ち上がりテストについて

40 cm 台に両腕を組ませた状態で、両脚を肩幅に広げ、床に対し下腿が 70°となるような座位姿勢を設定.

患側下肢を支持側とし、持ち上げた対側脚の膝を軽度屈曲位とさせた状態で反動を付けずに立ち上がり、3秒間静止させる動作の可否を評価

評価:ホームエクササイズについて

5つの選択肢から1つを選ぶアンケートを用いて自己評価させた。

評価日前1ヵ月間のホームエクササイズの実施回数について

毎日2 回以上行った場合:5 点

毎日 1 回行った場合:4 点

週 4~6 回行った場合 : 3 点

週 1~3 回行った場合:2 点

週に 1 回も行うことができなかった場合:1点

評価時にはホームエクササイズの確認を行い,指導したすべての内容を正しいやり方で,決められた秒数および回数をすべて実施できていなかった場合も同様に1点とした.

理学療法介入について

理学療法は一人の理学療法士が患者教育徒手理学療法およびホームエクササイズ指導を1回20分で行った

介入:徒手理学療法について

・ROM 制限に対する筋の制限因子を特定した筋に対し筋線維方向に垂直に施行する横断マッサージ
・筋線維方向に施行する機能的マッサージ
自動介助運動で同筋の収縮を促すものとした。

ホームエクササイズ:マッサージについて

・評価により特定した筋に対する横断マッサージをテニスボールを用いて各筋3分

ホームエクササイズ:運動について

方針:初期の運動は股関節軸の安定化および股関節衝撃吸収作用を担っている可能性のある股関節深層筋に対する筋活動賦活運動を導入。
※股関節深層筋群のうち内外閉鎖筋や小殿筋は低負荷運動で十分な収縮が得られることが確認されており、非重力位の運動から行うことで股関節痛が強い時期においても疼痛を悪化させることなく筋活動を促通することができる

非重力位で行うことができる運動

①:膝伸展位における股自動内外旋運動(背臥位股関節 0°屈曲位 および背臥位から自身の両手を背中側の床面に置き体幹をクライニングさせることで股関節を屈曲 30°,60°, 90°と変化させた肢位にて実施)を各肢位 30 回 1 セッ トずつ

②:腹臥位両股最大外転位からの等尺性外転運動を 20 回 1 セット

<1 ヵ月時に疼痛NRS が4未満となった患者に対して>

③:①を中止させ,端座位にて大腿遠位部下に丸めたバスタオルを入れることで股および膝を屈曲 90°とし,抗重力運動である股自動内外旋運動を 50 回 3 セット

<側臥位股外転運動が疼痛なく全可動域可能な患者に対して>

④:②を中止し,骨盤の代償を防ぐために腹部下に丸めたバスタオルを入れ骨盤を固定させ, 回数やセット数は全可動域を動かすことができる範囲に設定。5~10 回 を 1~3 セット

⑤足,膝,股の運動連鎖改善を目的として椅子からの立ち座り運動を10回行わせた

立ち座り運動は椅子の端に座った状態で肩幅に両足を 開き,膝がつま先より前に出ないように、また動作中は股関節内外旋中間位および腰椎前後弯中間位を維持することを意識させながら行わせた

理学療法介入効果

患者教育と徒手理学療法およびホームエクササイズ指導を患者の状態に合わせて2ヵ月間行い、疼痛,主観的stiffness,ROM,柔軟性,FADIRFのすべての項目において有意な改善を認めた。

筆者の考察

考察:MJS(Minimal joint space最小関節裂隙幅)について

初回の疼痛関連因子に MJSは含まれなかった。
2ヵ月時の疼痛に対しては2ヵ月時主観的stiffnessだけでなくMJSも関連を示した。
初回では疼痛関連因子は進行・末期股関節症のように関節内因子による影響よりも、筋の短縮などの関節外因子による影響のほうが強かったが、2 ヵ月間の理学療法介入により関節外因子が改善し、本来隠れていた関節内因子が明らかになったのではないかと考える

※本研究では画像診断として X 線正面画像以外の検討を行っていないため,関節内病変の詳細は不明

考察:初回外転ROMについて

41.5°以下:内転筋の柔軟性を改善することで疼痛が改善する可能性が高い

41.5°以上:関節内因子による影響なので改善しにくい!?

考察:2ヵ月時主観的stiffness

2 ヵ月時の疼痛 NRS が 2 以下となるためには2ヵ月時主観的stiffnessを1.5点以下とする必要があることが明らかとなった.股関節痛と主観的stiffness は密接な関連性があることが伺える.

本研究では短縮筋に着目しアプローチを行ったが, 2 ヵ月時主観的stiffnessの改善が乏しかった症例では,筋組織だけではなく,関節包や靭帯に起因していた可能性がある.筋に対するアプローチで改善が乏しい症例に対しては,関節包や靭帯の伸張を目的としたアプローチを追加する必要があると考える.

考察:ホームエクササイズについて

2 ヵ月時の疼痛 NRS が 2 以下と なるためには2 ヵ月時ホームエクササイズ実施点数が4.5 点以上必要であることが明らかとなった。

5 点(毎 日 2 回以上実施)と 4 点(毎日 1 回実施)の間を目指すことになるため,毎日2回以上,少なくとも毎日必ず 1 回はホームエクササイズを正しく実施させる必要があると考える

研究の限界

・長期的な効果検証が必要

・関節内病変を詳細に確認するためには股関節 X 線軸位像やMRI 画像,CT 画像,超音波画像などを確認する必要

・活動量の定量的評価、心理面の評価を含めた検討を行っていない


いつも短くまとめることを意識していますが、良質な内容であるがゆえに、長くなってしまいました。
ぜひ、原文も読んでみて下さい。(R)

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